北森瓦版 - Northwood Blog (Author : 北森八雲. Since July 10, 2006.)
 
第12世代Core processorとなるであろう“Alder Lake”の全容が明らかにされた。既報通り“Alder Lake”は“Golden Cove”と“Gracemont”のHybrid Architectureとなる。Intelは“~Cove”の名前を持つCore系の高性能コアをPerformance core (P-Core)、“~mont”の名前を持つAtomの系譜の高効率コアをEfficient core (E-Core) と呼んでおり、今後はこれに従う方針とする。

その構成であるがデスクトップ向けが8 P-core + 8 E-core + 32 EU GPU、Mobile向けが6 P-core + 8 E-core + 96 EU GPU、Ultra mobile向けが2 P-core + 8 E-core + 96 EU GPUとなるのはこれまでの情報通り。E-coreは4-coreで1つのクラスタを形成しており、P-core 1-coreおよびE-core 1クラスタあたり3MBの共有L3 cacheを搭載し、デスクトップ向けの8+8+1の構成であれが合計30MBとなる。P-coreはHyper Threading technologyに対応し1-coreで2-threadを駆動できるのに対し、E-coreはHyper Threading technologyに対応しないため1-core/1-threadとなるのもこれまでの情報通りである。また命令セットは“Golden Cove”がAVX-512(サーバー向けは加えてAMX)まで対応するが、“Gracemont”は“Haswell”世代のAVXまでの対応となる。過去の情報にもあった通り“Golden Cove”のみ対応の命令セットにおいてはHybrid Architectureを用いることはできない(笠原氏の記事では「利用できない状態」と表現されているが、E-coreを無効化すれば使用できるかどうかまでは不明)。

◇“Alder Lake”のメモリとI/O
  ・メモリはDDR5-4800, DDR4-3200, LPDDR5-5200, LPDDR4X-4266対応
  ・“Alder Lake-S”はPCI-Express 5.0を16レーン、4.0を4レーン搭載
  ・加えて最上位のチップセットはPCI-Express 4.0を最大12レーン、3.0を最大16レーン搭載
  ・Mobile向けの“Alder Lake-P/-M”はThunderbolt 4.0コントローラ内蔵

メモリはDDR5とDDR4の両対応。過去の情報ではZ690マザーのみがDDR5対応、下位チップセット搭載マザーはDDR4になるとも言われていたが、今のところこれは噂止まり。DDR5・DDR4両方のスロットを搭載した変態マザーが出るかどうかは・・・まあマザーボードメーカーのやる気次第だろうか(できたとしても混載はできず、排他仕様になるだろう)。

◇“Golden Cove”
“Sunny Cove”から“Willow Cove”はキャッシュの増強と周波数の向上が主で、コアの内部にまで手が入る改良はそれほど多くなかったが、“Golden Cove”ではコアの内部にがっつりと手が入る。Intelは過去にも“Golden Cove”をSingle-thread性能を向上させる世代と位置づけており、Single-thread性能を高めるべくフロントエンドからアウトオブオーダーエンジン、実行ユニットまで大きく手が入った。結果、第11世代比で19%のIPC向上を成し遂げたとする。

フロントエンドはキャッシュ(L1命令およびμOP Cache)周りの増強、分岐予測性能向上など多岐にわたるが、AnandTechでは最大の変更点としてデコーダーの増強を挙げている。これまでのCPUでは4-wide decodeだったが、“Golden Cove”では6-wide decodeに強化されている。x86で6-wide decodeの採用は初だと説明があり、その背景としてx86命令長が多岐にわたり、デコーダーを簡単に増強できなかったとされる。昨年のAMDのMike Clarke氏の発言が引用されており「4-wideを超えるデコーダーは実用上で欠点が発生する。複雑さの増大、そして何よりもパイプラインステージの増大を招く」とある。

フロントエンド同様にアウトオブオーダーエンジンはより強化され、実行ユニットは数の増加と機能追加が行われている。あまりにも多くて書き切れない上に、理解が追いついていないので、笠原氏の記事やAnandTechを参照して欲しい。また“Sunny Cove”と“Golden Cove”の各ユニットの比較はTom's Hardwareの4ページで表にしてわかりやすくまとめられている。

◇“Gracemont”
こちらも“Golden Cove”同様に全体にわたって増強が行われている。フロントエンドが“Tremont”譲りの3+3-wideだったり、実行ポートが17ポート(“Golden Cove”は12ポート)に強化されていたり、実行ユニットもゴリゴリに増強されていたりと、“Golden Cove”に負けないほどの強化が行われている。

そして実現した性能であるが、“Skylake”と比較が行われている。1-core/1-threadにおいては“Skyalake”と同消費電力であれば40%増しの性能、ないしは40%少ない消費電力で“Skylake”と同じ性能を実現できるとする。また4-core/4-threadの“Gracemont”と2-core/4-threadの“Skylake”では、最大性能は“Gracemont”が80%高く、一方同性能であれば“Gracemont”が8割減の消費電力を実現できるとする。

AVX-512を無効化した“Skylake”の性能をより省電力に実現した、と表現していいだろうか。

“Alder Lake”のダイの模式図を見るとおおよそ1-coreの“Golden Cove”が4-coreの“Gracemont”と同等のダイエリアを占めている。

◇Intel Thread Director
このHybrid architectureを最適化するための機能がIntel Thread Directorで、Windows 11と組み合わせて利用できる。

Intel Thread DirectorはProcessor内にマイクロコントローラの形でハードウェア的に実装され、OSやアプリケーションが必要とする処理能力をモニタリングし、OS側に「助言」を与える。OSはその助言を調整し、タスクを割り当てる。

Intel Thread Directorのスケジューリングの例として以下のような流れが提示されている。

  1:負荷の高いタスクにはP-coreが割り当てられる
  2:バックグラウンドで動くタスクにはE-coreが割り当てられる
  3:AI等の高負荷タスクではP-coreすべてが割り当てられる。
  4:深型低い場合は高性能コアから高効率コアに切り替わる

「Windows 11に最適化されている」というのが1つのポイントで、過去の情報でも“Alder Lake”のHybrid Architectureを最大限生かすにはWindows 11が必要であるとされていた。

“Alder Lake”はIntel 7プロセスで製造され、今年中にユーザーの手元に届く。Windows 11もおそらくは近い時期になるはずで、今年末から来年にかけてWindows 11+“Alder Lake”のシステムが多数登場することになりそうだ。


パソコン工房のお得なキャンペーン



コメント
この記事へのコメント
183374 
HaswellだったらAVX2で、Sandy BridgeならAVXなはず。
AVX2のGATHER系の命令使えないのはつらいかも。
2021/08/20(Fri) 02:14 | URL | _ #-[ 編集]
183375 
AVX512はわりとこのまま死んでもらったほうが結果オーライな命令セットなので良い方向だと思う
Bigコアのほうからも削っていいのよ
2021/08/20(Fri) 02:21 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183376 
ゲームのメインスレッドなどシングルスレッド性能が必要な処理もまだまだ多いので、
上手く動けば理想的ではあるがどうなるか
2021/08/20(Fri) 03:08 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183383 
AVXは256bit幅まで対応なのでAVX2使えますよ。
2021/08/20(Fri) 06:06 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183387 
昨夜のimpress記事によると「Skylakeの同コアで性能40%UP」との事
5年前のCPUから40%UPはいいのか悪いのか・・・・
2021/08/20(Fri) 08:38 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183388 
Gracemontベースの Celeron/Atomは面白そうだな。
2021/08/20(Fri) 08:55 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183390 
BIOSでPかEをごそっと無効化できるなんて情報もあることだし、なかなか弄り甲斐があって長く使えそうな気がする。
2021/08/20(Fri) 10:19 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183392 
やっぱりHybridを最大限生かすにはWin11となりますか。
でLinuxなど他のOSはどう対応するのだろう。またLinusにぼろくそ言われなければいいけど。
2021/08/20(Fri) 10:40 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183393 
AMDはAVX-512ではなくGPUを使ってくれと言いたいだろうなと...
AVXすら使わないプログラムは多いだろうし、その辺りを適切に処理出来るスケジューラーを用意出来るのならサブコアにAVXどころか浮動小数点演算ユニットすら要らないと思う。
その代わりに整数コアを増やす...
2021/08/20(Fri) 10:42 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183394 
とりあえず渾身の一品であることは理解した
プロセスの集積度のわりに詰め込み過ぎ感あるが
あとは現物の性能だな
2021/08/20(Fri) 10:50 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183396 
急にWindows11が出てきたのはこいつのせいなのかな
2021/08/20(Fri) 12:13 | URL | LGA774 #GMs.CvUw[ 編集]
183400 
Golden Coveは言わずもがなGracemontの高性能っぷりが想像以上ですね
2021/08/20(Fri) 15:00 | URL | LGA774 #EBUSheBA[ 編集]
183402 
>183375
あと何年かすればSmallコアを発展させたシングル重視のコアを作るんじゃないかな。
AVX512は無理にCPUで処理しても意味が無いしね。
Xeをコプロ扱いしてそっちに処理を投げるようにコンパイラを改修するでしょう。
2021/08/20(Fri) 15:31 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183403 
>笠原氏の記事では「利用できない状態」と表現されているが、E-coreを無効化すれば使用できるかどうかまでは不明

AnandTech情報では、E-coreを無効化してもダメだと書いてある。
(https://www.anandtech.com/show/16881/a-deep-dive-into-intels-alder-lake-microarchitectures/5)

>When we say losing support, we mean that the AVX-512 is going to be physically fused off, so even if you ran the processor with the E-cores disabled at boot time, AVX-512 is still disabled.
2021/08/20(Fri) 16:27 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183405 
Windows 11の唐突な登場は、Alder Lakeの出荷開始と連動したものだったのかも知れないですね。
“Windows 10”の名称を継続していたら、Intel Thread Directorへの対応の有無を区別するのは困難だったでしょうし。
2021/08/20(Fri) 19:03 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183406 
intel7プロセスとか10nmのくせに7nmに勘違いさせようと狙ってやってるだろ
ほんと落ちるところまで落ちたよな
2021/08/20(Fri) 20:38 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183409 
Golden CoveのIPC 19%向上は第11世代デスクトップCore比なので、
Tiger Lake (Willow Cove)ではなくRocket Lake (Cypress Cove≒Sunny Cove)という点は注意が必要かと
2021/08/20(Fri) 22:05 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183411 
なんかここまで「Gracemont」の性能が上がってしまうと、一般人には「Gracemont」だけで良さそうだし、TDP125Wの技術誇示SKUを除いて、TDP65W・35WあたりのSKUは「GoldenCove」コアを無くし、Gracemontの32C32Tとかにしても良いかもしれない
AVX2もあるんだし、アプリの対応は然程問題無いはず(Zen3でさえAVX2)
というか、Sapphire Rapidsの他に、Gracemontオンリーの超多コアXeonがあっても良いような…
Ice-SPのXCCは40コアだし、Big1コアあたりSmall4コアと考えれば、40x4=160…とまでは行かなくとも、32x4=128コアくらいなら行けそう
超多コアAtomというと「Knights Landing」を思い出してしまうが、Silvermontベースだったあの頃とは違って、かなりの性能も期待出来るはず
HEDT向けに、16x4の64C64Tとかもアリかも(Windowsのプロセッサグループの制約的な意味で)
2021/08/20(Fri) 23:22 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183414 
Intel Thread Directorが割り振るコアを監視することで、どんな命令が実行されているかを推定できたりしないかなあ
2021/08/20(Fri) 23:44 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183416 
※183406
まあそれはTSMCやサムスンも同じなんで文句言っても仕方ないですね
君の理論で言えばそういう落ちるところまで落ちた業界と言う事さ
2021/08/21(Sat) 00:16 | URL | LGA774 #EBUSheBA[ 編集]
183418 
GracemontのみのCPUも販売してほしいんだけどなあ。
2021/08/21(Sat) 01:26 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183425 
out of order他いろいろ変更…夢はあるけどセキュリティホールとか
いろんなトラップにかかるかもね
一世代見てからでいいわ
変な事するよりsmall多コア路線でソフトウェア界をその方向に誘導した方がいい
2021/08/21(Sat) 09:51 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183434 
>183418
0+16でi3の値段の製品があったら面白いだろうねぇ
まぁそんな下剋上ホイホイ作るわけないんだが
2021/08/21(Sat) 18:43 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183455 
>>183383
CPUのflagsみてもAVXとAVX2は別ですよね?
AVXが浮動小数点向けの命令で、
AVX2が整数演算向けだったはず。
自分の理解が変なのか……。
2021/08/23(Mon) 04:09 | URL | 183374 #-[ 編集]
183456 
>183434
Gracemontで十分おじさんが出てくるぞ。
俺も歳を取ったな……
2021/08/23(Mon) 09:01 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183458 
>183393
その結末がbulldozerよ
AMDが思っている以上にCPUを使った浮動小数点演算を使っているプログラムは多かったわけだぞ
2021/08/24(Tue) 00:15 | URL | LGA774 #-[ 編集]
183459 
>183406 
TSMCとGFの悪口はNG

どちらかというとファウンダリビジネスを始めるにあたって顧客のためにTSMCとかGFのレベルまで下りてきたというほうが正しい。
2021/08/24(Tue) 00:16 | URL | LGA774 #-[ 編集]
コメントを投稿する(投稿されたコメントは承認後表示されます)