北森瓦版 - Northwood Blog (Author : 北森八雲. Since July 10, 2006.)
世の中にはあまり知られることなくひっそりと登場し、そしてひっそりと消えていく不遇マイナーなPCパーツがある。今回は比較的最近登場したAMDの2製品を紹介したい。
 


◇Radeon RX 6700

「Radeon RX 6700 XTなんて珍しくないじゃないか。しかもまたtypoか? XTが抜けてるぞ」
という声が聞こえてきそうだが、Radeon RX 6700でいいのである。そう、XTのない無印版のRadeon RX 6700だ。2022年の中頃にひっそりと登場し、国内ではSappphireと玄人志向から2製品が登場した。

そしてSapphireの製品がこれである。

Radeon RX 6700 1 (2023年3月11日)

決して6700 XTの“XT”をPhotoshopで削ったわけではない。
私が購入したときはローエンドGPUが並ぶ棚の最下段の端っこに追いやられてしまっていた。なんとも不遇である(決して不遇みを感じて買ったわけではない、断じて)

Radeon RX 6700 2 (2023年3月11日)

カードの外観はこんな感じ。カード長は24cm、ぎりぎりATXマザーの幅に収まる長さだ。ファンは2基、PCI-Express電源コネクタは8-pin×1である。

スペックは以下の通り。

Radeon
RX 6750 XTRX 6700 XTRX 6700
GPUコア
製造プロセス
Navi 22 7nm FinFET
Compute unit404036
StreamProcessor256025602304
Ray Accelerator404036
TMU160160144
ROP646464
コア
周波数
Base****MHz****MHz1941MHz
Gaming2495MHz2424MHz2164MHz
Boost2600MHz2581MHz2450MHz
Infinity Cache96MB96MB80MB
搭載メモリGDDR6 12GBGDDR6 12GBGDDR6 10GB
メモリ周波数18.0Gbps16.0Gbps16.0Gbps
メモリインターフェース192-bit192-bit160-bit
Total Board Power250W
8-pin+6-pin
230W
8-pin+6-pin
175W
8-pin
価格'22/5/10
$549
'21/3/18
$479
'22/6/9
$***


Radeon
RX 6650 XTRX 6600 XTRX 6600
GPUコア
製造プロセス
Navi 23 7nm FinFET
Compute unit323228
StreamProcessor204820481792
Ray Accelerator323228
TMU128128112
ROP646464
コア
周波数
Base****MHz1968MHz****MHz
Gaming2410MHz2359MHz2044MHz
Boost2635MHz2589MHz2491MHz
Infinity Cache32MB32MB32MB
搭載メモリGDDR6 8GBGDDR6 8GBGDDR6 8GB
メモリ周波数17.5Gbps16.0Gbps14.0Gbps
メモリインターフェース128-bit128-bit128-bit
Total Board Power180W
8-pin
160W
8-pin
132W
8-pin
価格'22/5/10
$399
'21/7/30
$379
'21/10/13
$329


ベースとなるコアはRadeon RX 6750 XT/6700 XTと同じ“Navi 22”である。“Navi 22”そのものも他と比べると地味に採用製品が少ないGPUコアだったりする。Radeon RX 6700のCompute Unit数はRadeon RX 6750 XT/6700 XTとRadeon RX 6650 XT /6600 XTのちょうど中間となる36基だ。Total Board Powerは低めの175Wだが、Sapphireのこの製品はGaming周波数が2330MHz、Boost時周波数が2495MHzとオーバークロックされており、その影響か消費電力は220Wとなっている。8-pin×1で収まるぎりぎりの数字だ。

比較はRadeon RX 6700とRX 6650 XTで行った。5号機のGPUを差し替える形で行ったのでそれ以外のパーツは同一である。参考にRadeon RX 6600 XTの数字も載せるが、こちらは別PCでパーツが全く異なるためあくまでも参考にとどめて欲しい。

5th PC 19.36th PC 20.3
CPURyzen 9 5950X
16-core/32-thread,
3.40GHz/Boost Max 4.90GHz,
L3=64MB, TDP105W
EPYC 7513
32-core/64-thread
2.60GHz/Boost Max 3.65GHz
L3=128MB, TDP200W
MotherboardGigabyte X570 AORUS Master
AMD X570 chipset, ATX
ASRock Rack ROMED8-2T
ATX
memoryCrucial DDR4-3200 16GB×4DDR5-3200 RDIMM 32GB×8
GPUSAPPHIRE Radeon RX 6700 GAMING OC 10G GDDR6
Hellhound Sakura AMD Radeon RX 6650 XT 8GB GDDR6
BIOSTAR VA66T6TM81
(Radeon RX 6600 XT)
Storage 1Gigabyte Aorus NVMe Gen4 SSD 1TBIntel Opatne 905P 380GB


主要なところはこんなところか。
で、ベンチマークスコアなのだが、グラフィックカードの割にはGPU系のベンチマークが少なかったり、消費電力や動作温度、騒音などの測定をしていないあたり蝋燭レビューが蝋燭たるクォリティ満載のシロモノである。おまけに余計なものが悪目立ちしていて、まさにやってはいけないレビュー記事の見本のようになってしまった。

Radeon RX
6600 XT
Radeon RX
6650 XT
Radeon RX
6700
Blender 3.0monster300.58195.35187.60-3.97%
junkshop184.93126.26124.71-1.23%
clasroom139.9790.0989.15-1.04%
CineBench R15OpenGL223.72269.45282.12+4.70%
CPU609442244182-0.99%
CPU single200264265+0.38%
CineBench 20CPU1421397729881+0.40%
CPU single472625629+0.64%
CineBench 23CPU366452507025206+0.54%
CPU single120916041612+0.50%
CPU-ZSingle510.6N/A660.6N/A
Multi17831.7N/A11706.5N/A
PCMark 10706877137909+2.54%
Essentials953491129697+6.42%
Productivity795796569862+2.13%
Digital Content Creation126321415114038-0.80%
3DMark
TimeSpy
95701031311547+11.97%
Graphics9570990511226+13.34%
CPU106711346313786+2.40%
3DMark
FireStrike
215142696929157+8.11%
Graphics223212888231405+8.74%
Physics292693784537926+0.21%
Combined128961399115479+10.64%
FFXV Benchmark125731362514362+5.41%
ちはやローリング2351203
稚内
2830765
シベリア
28330263
シベリア
-0.018%


最後の%はRadeon RX 6650 XTからRadeon RX 6700へのスコアの増減を示している。おおむね10%弱のスコア増であるが、Radeon RX 6600 XTから6650 XTへの性能向上幅よりも低いものも多い。ただし、Radeon RX 6600 XTはゲームに向いたCPUに変えればもう少しスコアが上がる余地があり、6600 XTと6650 XTの差はもう少し詰まるだろう。しかしながらこの差であれば製品化しないという選択肢は大いにあり得る。Radeon RX 6700は登場時の記事にもあった通り、元々はマイニング向けに投入していたものであるがマイニングバブルがはじけて余剰となったものが活用されたのだろう。ショップ側もとりあえずは置いたが、やはり微妙だったのだろう。これを購入したショップの通販サイトを確認したが、Radeon RX 6700は姿を消していた。



◇Ryzen 9 5900

「Ryzen 9 5900Xなんて珍しくないだろう? そしてまたtypoか?? Xが抜けているぞ」
これでいいのである。Ryzen 9 5900(non-X)、“Zen 3”世代の12-core/24-thread CPUのTDP65Wモデルである。

Ryzen 9 5900 (2023年3月11日)

左がRyzen 9 5900、右がRyzen 9 3900だ。Ryzen 9 3900は“Zen 2”世代の12-core/24-threadのTDP65Wモデルである。Ryzen 9 5900同様OEM向けとされていたが、こちらはバルクでの流通があった。一方、Ryzen 9 5900は国内での単体販売は今の今まで確認されていない。そのため、このRyzen 9 5900は海外から取り寄せたものである。

Ryzen 9 5900 CPU-Z SS (2023年3月12日)

“Vermeer”はB0 stepingとB2 steppingがあるとされるが、今回入手できたRyzen 9 5900はB0 steppingだった。

Ryzen 5000 series CPU(7nm / Vermeer / SocketAM4)
MNコア数
スレッド数
定格周波数
Boost時周波数
キャッシュTDP対応メモリ
Ryzen 9
5950X
16-core
32-thread
3.40GHz
Boost 4.90GHz
L2=512kB x16
L3=64MB
105W2ch DDR4
-3200
'20/11/5
$799
Ryzen 9
5900X
12-core
24-thread
3.70GHz
Boost 4.80GHz
L2=512kB x12
L3=64MB
105W2ch DDR4
-3200
'20/11/9
$549
Ryzen 9
5900
12-core
24-thread
3.00GHz
Boost 4.70GHz
L2=512kB x12
L3=64MB
65W2ch DDR4
-3200
OEM
Ryzen 7
5800X3D
8-core
16-thread
3.40GHz
Boost 4.50GHz
L2=512kB x8
L3=96MB
105W2ch DDR4
-3200
'22/4/20
$449
Ryzen 7
5800X
8-core
16-thread
3.80GHz
Boost 4.70GHz
L2=512kB x8
L3=32MB
105W2ch DDR4
-3200
'20/11/5
$449
Ryzen 7
5800
8-core
16-thread
3.40GHz
Boost 4.60GHz
L2=512kB x8
L3=32MB
65W2ch DDR4
-3200
OEM
Ryzen 7
5700X
8-core
16-thread
3.40GHz
Boost 4.60GHz
L2=512kB x8
L3=32MB
65W2ch DDR4
-3200
'22/4/4
$299
Ryzen 5
5600X
6-core
12-thread
3.70GHz
Boost 4.60GHz
L2=512kB x6
L3=32MB
65W2ch DDR4
-3200
'20/11/5
$299
Ryzen 5
5600
6-core
12-thread
3.50GHz
Boost 4.40GHz
L2=512kB x6
L3=32MB
65W2ch DDR4
-3200
'22/4/4
$199


Ryzen 9 5900は12-core/24-threadで周波数はBase 3.00GHz/Boost 4.70GHzとなる。TDP105WのRyzen 9 5900Xと比較すると周波数の差はBase -700MHz/Boost -100MHzである。

当初はRyzen 9 3900との比較を考えていたが、Ryzen 9 3900のマザーが不調を起こし、燃えないゴミ行きとなってしまったため、Ryzen 9 3950Xを載せていたPCにRyzen 9 5900を載せた。そのため“Zen 2”世代のTDP105W 16-core CPU対“Zen 3”世代のTDP65W 12-core CPUの構図となった。


7th PC 18.1
CPURyzen 9 3950X
16-core/32-thread,
3.50GHz/Boost Max 4.70GHz,
L3=64MB, TDP105W
Ryzen 9 5900
12-core/24-thread
3.00GHz/Boost Max 4.70GHz
L3=64MB, TDP65W
MotherboardASUS ROG STRIX X370-F Gaming (AMD X370 chipset, ATX)
memoryCrucial DDR4-2666 16GB×4
GPUMSI GeForce RTX 3060 TiVENTUS 2X 8G OCV1 LHR
Storage 1Plextor M8PeG 512GB


CPU以外は一~二世代古い構成である。まさかX370マザーボードが“Zen 3”まで対応するとは思わず、この7号機は稼働開始から満5年を迎えた長命なPCとなった。

Ryzen 9 3950XRyzen 9 5900
Blender 3.0monster177.49122.28-30.82%
junkshop109.1980.24-26.51%
clasroom85.4658.31-31.77%
CineBench R15OpenGL161.81229.93+42.10%
CPU39602825-28.66%
CPU single213259+21.60%
CineBench 20CPU89366550-26.70%
CPU single524609+16.47%
CineBench 23CPU2315516759-27.23%
CPU single13481570+16.47%
CPU-ZSingle557.9654.4+17.30%
Multi10968.57810.5-28.79
PCMark 1071857635+7.65%
Essentials1006310572+5.06%
Productivity868410572+18.23%
Digital Content Creation1151811572+0.47%
3DMark
TimeSpy
1131511128-1.65%
Graphics1115311160+0.063%
CPU1233110956-11.15%
3DMark
FireStrike
2573825358-1.48%
Graphics2842828517+0.31%
Physics3126529699-5.01%
Combined1303512370-5.10%
FFXV Benchmark1405714419+2.57%
ちはやローリング2317000
稚内
2825737
シベリア
+21.96%


Single-threadとMulti-threadで割と綺麗に傾向が分かれるのが面白い。Single-threadでは“Zen 3”のIPCの高さが効くのか、Ryzen 9 5900が優位である。一方、Multi-threadでは“Zen 3”といえども絶対的なコア数の差とおそらくは周波数差をひっくり返すことはできず、Ryzen 9 3950Xが優位となっている。またこの傾向を見ることでどのベンチマークがSingle-threadで優位になるのかMulti-threadで優位になるのかがわかってくる。例えばFFXVは少なくとも12-core以上を使用していないだろうことが推定される。おそらく多く使っていても8-core程度だろうか。逆に3DMarkのCPUスコアは12-coreないしは16-coreすべてが使われている可能性が高そうである。

最後に消費電力と動作温度である。OCCT読みなのはご容赦いただきたい。Ryzen 9 5950Xの測定時にRyzen 9 3950Xの消費電力を計測しているが最大で131W程度だった。ではRyzen 9 5900はどうか?

Ryzen 9 5900 OCCT Watt (2023年3月12日)

TDP65W版だけあり消費電力はかなり低く抑えられており78W程度である。

Ryzen 9 5900 OCCT Temp (2023年3月12日)

さらに優秀なのは動作温度である。瞬間的に60℃近くを記録するがその後はおおむね51℃程度で推移する。Ryzen 9 3950Xもそこまで廃熱に苦慮するCPUではなかったが、こちらはさらに低発熱である。おそらく小型PCに押し込んでも無理なく動作してくれるだろう。

プラットフォームがSocketAM4からSocketAM5に移りつつある現在、Ryzen 9 5900が何かしらの形で国内自作PC市場に出回る可能性は限りなく低い。しかし、代わりというのも語弊があるかもしれないが、SocketAM5ではRyzen 9 7900が12-coreのTDP65Wモデルとしてリテール市場に流通している。こちらもその省電力性は過去のレビュー記事で見せたとおりで、Ryzen 9 5900の正当な後継製品と言える。“Zen 4”世代で12-core/24-threadのTDP65Wモデルが出てきたのは素直に歓迎したい。16-core/32-threadでTDP65WのRyzen 9 7950が出るかどうかの見極めが悩ましいが、出ないと判明したら我が家のRyzen 9 5900の後継はRyzen 9 7900となるだろう。それまで満5年を迎えた7号機にはもう少し頑張ってもらうつもりだ。

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コメント
この記事へのコメント
194108 
写真がないということはスッポンは起きなかったということ

チッ
2023/03/12(Sun) 10:00 | URL | LGA774 #-[ 編集]
194109 
いいじゃない、この記事
楽しめました^^/
2023/03/12(Sun) 12:00 | URL | LGA774 #-[ 編集]
194110 
5900のTDPが200Wになってて、謎の熱源体と化してますぜ・・・
2023/03/12(Sun) 12:03 | URL | LGA774 #-[ 編集]
194112 
Radeon RX 6600Mのグラフィックカードは持ってないんですか?
2023/03/12(Sun) 15:22 | URL | LGA774 #JalddpaA[ 編集]
194113 
いいですね
載せてない部分が気になって自分でやって確かめたくなる…まぁレビューに出るパーツもPCそのものの構成もニッチ過ぎて再現できないのだけれども…
2023/03/12(Sun) 20:55 | URL | LGA774 #-[ 編集]
194114 
消費電力やサイズ的に扱いやすそうですね
2023/03/12(Sun) 21:44 | URL | LGA774 #-[ 編集]
194118 
radeon一族の中でもその出自やXT付かない事もあって石投げられたり…してないよね
2023/03/12(Sun) 23:18 | URL | LGA774 #-[ 編集]
194121 
面白いレビュー?で楽しかったですw
他の方のコメントにもありましたが、筐体(ケース)やデスク周りも是非…
2023/03/13(Mon) 03:15 | URL | LGA774 #-[ 編集]
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